ストラトはネックで選べば失敗しない

ギター

中古ショップなどでストラトを試奏した時、

音は良いけどネックのフィーリングが・・・
憧れのモデルを見つけたけどネックが太すぎる・・・

ストラトに限ったことではないかもしれませんが、
そうしたことを感じたことが一度はあるのではないでしょうか?

ギターのネックプロファイルは任意に作られているわけでなく、
モデルによってシステマチックに決められています。


この記事では主にストラトキャスターのネックプロファイルの種類について
解説します。断言しますが、ギターを選ぶ際、ネックプロファイルを理解することは必須です。

ネックプロファイルを色々見ただけでフェンダー社のラインナップの方針などが如実に分かるのです。

東京・秋葉原 イケベ楽器

詳しくは後述しますが、高額となる
カスタムショップ製のギターを買う際はネックプロファイルを確認することがマストです。

東京・秋葉原 ハードオフ

上の写真ですが、お店の人が書いたポップに「少しきつめのVシェイプ」と書かれています。
標準的なVシェイプの握り加減を把握していれば手に取らなくても想像がつきます。

このあと詳しく書きますが、Vシェイプというのは50年代のスペックで、「少しきつめの」というのは80年代中期にクラプトンモデルを製作する際にプロトタイプとして登場したシェイプであることなどが想像されます。

ネックシェイプを知ればいろいろな世界が広がっているのです。

ストラトキャスターのネックプロファイル

大まかには3種類

フェンダー社の公式HPによると
ネックを輪切りにした時の断面図の形状をネック・プロファイルと呼び、その形状から「C」「U」「V」の3つに分類されています。

現行のアメリカンウルトラストラトなどはModern “D”となっていますがこれもCシェイプの面積を増やした派生と考えて良いでしょう。

要するに、「C」「U」「V」の3つのプロファイルを基準にすることで、派生したものも相対的に理解できるのです。

出典:エレクトリックギターメカニズム
リットーミュージックムック


3種類とそのバリーションが、ギターの型番や製造された年代によってある程度決まっているのです。

この3つの実際のフィーリングをなんとなく覚えておけば、カタログスペックを見ただけでネックの握り具合が想像できます。

フェンダーの現行のモデルを買うなら一番上の「Cシェイプ」に属するMODERN “C “というネックプロファイル(その派生も)が多くを占めています。Cシェイプをさらに薄くフラットにした感じになります。

そして、

後述しますが、このMODERN “C “はフェンダー社の中でも特別扱いです。

ちなみに、フェンダー社はHPでネックプロファイルの違いによる音の変化はないと断言しています。
つまり、ネックプロファイルは握った時のフィーリングだけで選べば良いのです。

(注 指板は音への影響大ですよ)

近年のものは多くがモダンCシェイプ

と紹介したところで、

3つのネックプロファイルにはバリエーションが多数あり、奥が深く非常に面白い世界が広がっています。これを研究することで、エレキギターの実にいろいろな側面が見えてくるのです。

せっかく3つのネックプロファイルを知ったなら、もう少し突き詰めてみましょう。

カスタムショップのネックプロファイル

米国のカスタムショップで用意しているネックプロファイルですが、ゼロからオーダーするラインナップと西暦を冠した既製品で棲み分けられています。アラカルトと定食のようなものです。

オーダー品のネックプロファイル

「C」「U」「V」はカスタムショップ内でさらに年代や特定の年などによって細かく分類されます。

どういったネックシェイプがあるのか調べるために、本国のフェンダー社のHPを見てみると、2023年のカタログでオーダーできるのは下記の14種類です(受け付けているかは要確認です)。

1951 “U”
■’52 STYLE “U” 
10/56 “V”
’57 STYLE SOFT “V“

’59 “C”

■’60 STYLE OVAL “C“
’63 “C”
’66 STRAT OVAL “C”
’65 STRAT “C”
1969 “U”

LARGE “C “
MODERN “C “
MODERN “V”
JAGUAR /JAZZMASTER “C”

フェンダーカスタムショップの2023年版カタログから

MODERN “C “があるのに気がつきましたか?
と言うことは

フェンダーの現行のレギュラーラインナップの多くのギターに搭載されいてる
MODERN “C “(モダンC )というのはカスタムショップのオーダー品にも採用されているのです。
人気が高いのだと思われます。

アメプロやエリートはMODERN “C “TO “D“DEEP“C “などに進化しています。
それに比べてカスタムショップは保守的な印象です。


話を戻して、カスタムショップのネックプロファイルの種類を見て気が付くことと言えば、

1951年のテレキャスターの原型に搭載されたUシェイプなどもオーダーできるようです。
そして、59年にはCシェイプが存在していたことも伺えます。

あと、Vシェイプというのは完全に50年代までのスペックだったことがわかります。

個人的にはモダンVというのが気になります(経済的に購入は無理ですが)。

カスタムショップ既製品のネックプロファイル

一方、
西暦を冠した既製品をカスタムショップで注文すると以下のようなネックプロファイルになります(2023年版カタログでは)。

50万円ほどで市場に出回っているカスタムショップ製もこれに当てはまるものが多いと思われます。
2023年はこの西暦のモデルが市場に並ぶことが予想されます(個人的には56が欲しいです)。
ただ、代理店や大手ショップのオーダー品も多数あり多種多様です。

1955 STRATOCASTER  ‘55 “U” 
1956 STRATOCASTER  10/56 “V”
1960 STRATOCASTER ‘60S OVAL “C”
1963 STRATOCASTER ‘60S OVAL “C” 
1965 STRATOCASTER ‘65 “C” 
1966 STRATOCASTER  ’66 OVAL “C”
1969 STRATOCASTER ‘69 “C”

既製品クラスと言えど、ストラトだけで7種類もあり、ネックプロファイルは5種類です。
こうしてみると、オーダー品に比べ、ざっくりとした汎用性のある名前のネックプロファイルになっているようです。弾きやすさを追求した感じではなく、当時を再現するコンセプトと言えますね。

カスタムショップ内のオーダー品と既製品の共通点は、1969年の仕様が最新で70年以降のものは存在しないこと、65年はいずれもCシェイプであることなどです。

そして10/56 “V”というシェイプはカスタムショップのオーダー品と既製品の両方で選べる仕様となっていることがわかります。50年代を代表するVシェイプなのでしょう。

Fender Mod shopで選べるのは
Custom Guitars & Basses Designed By You | Fender Mod Shop
Design your own custom guitars and basses, built to order in the Fender Mod Shop in Corona, CA.

上記のリンクはフェンダー社に直接オーダーできるサイトです。いつかは使ってみたいと思う憧れの一つです。その名も「Fender Mod shop」

上の画像は、Fender Mod shopのネック選択画面です。ここにもMODERN “C “がありました。
(青線で囲っています)
ちなみにこのFender Mod shopではネックは主にCシェイプからしか選べないようで、
カスタムショップにオーダーシートを出す注文とは別物と思われます。

MODERN “C “ はレギュラーのフェンダー、カスタムショップ、Mod shopのいずにもラインナップされている超定番ネックプロファイルと言って良いでしょう。まさに優等生です。

カスタムショップ製の中古を買う時は

カスタムショップのギターはオーダー品と既製品ではネックプロファイルが分かれているのがお分かりのことだと思います。それを踏まえると、

カスタムショップ製の中古などを見る時、

LARGE “C “などオーダー品にしかないネックシェイプだった場合、
ビルダーのグレード指定からパーツの材質、配線方法など含め、
ゼロからオーダーされ年月をかけてしっかり作られたものである可能性があります。

ある意味、プロや富裕層が金に糸目をつけずフェンダー社に注文したもので、
気に入れば最高の買い物になり得ます。うまくいけば普通のカスタムショップ製のものと同じような値段で買えるかもしれません。

特にUシェイプのものはカスタムオーダー品の可能性が高く、新品で店頭に並ぶこともあるますが値段は10万円ほど高いです。

一方、

‘69 “C”など既製品クラスのネックプロファイルだった場合、
フェンダーの日本法人が輸入するなどして大手楽器店などで普通に流通しているものの
中古品であると推測されます。
CシェイプやVシェイプなどとしか書いてないものもこちらに該当するかと思われます。

ただし、例外はたくさんあって、ショップオリジナルのオーダーものがあったり、フェンダーの日本HPには本国のカタログのいいとこどりをしたようなラインナップになっていたりしています。

要するに、
カスタムショップにはオートクチュールとプレタポルテの2種類があり、ネックプロファイルが棲み分けられているのです。オーダー品にしかないネックプロファイルだったら、誰かが何かしらの目的で製作した一点ものと思われます。

カスタムショップが用意しているネックプロファイルを見ただけでも色々なことがわかることが実感できたでしょうか。なかなかに奥が深いのです。

現行のレギュラーラインは

つづいて、フェンダーのレギュラーラインです。

筆者所有の1957 STRATOCASTERのネック

2022年10月に発表されたAmerican Vintage IIのネックプロファイルを見てみると、

■1957 STRATOCASTER  1957 “V”
          
■1961 STRATOCASTER  1961 “C”

■1973 STRATOCASTER  1973 “C” 

となっていて、レギュラーライン独自のスペック(名前)です。
特に3つ目の1973ストラトはボディーの仕様も含めここだけにあるものです。

このようにしてレギュラーのフェンダーとカスタムショップの差別化を図っていると言ってよいかと思います。

つまり Uシェイプ10/56 “V”のネックで弾きたければカスタムショップ製しか選択肢がないのです。
逆に、
70年代のスペックに触れたければレギュラーのアメリカンビンテージ2しかありません。

アメビン2にしかないモデル

ちなみにですが、

私が高校生だった1990年代、クラプトンのブラウニーは1957年製とされていました。
(2000年代になり1956年製と公式に発表)
というわけで、個人的に1957という4つの数字に特別な思い入れがあります。
当時の愛機はJAPANのST57で、練習のある日は学校に持って行き、ロッカーに入れていました。

現在、ST57の中古は大量に出回っていて、57のスペックや仕様に憧れた人が多かったことが伺われます。

残念ながら2023年のカスタムショップの既製品のカタログに1957モデルは見当たりません。

しかし、日本のフェンダーのHPにはカスタムショップ製の1957ストラトがあるのです。
特別にオーダーしたか、57の仕様に寄せたオーダーをして、商品名に1957を冠したのでしょう。

私を含めた日本人が1957という数字に特別な思い入れを持っていることが伺えます。

ちなみに上記写真の1957ストラトですが、「現代的な改良を施したと」説明されていて
9.5インチラジアス指板が採用されるなど、1957を名乗っていいのか疑問が残ります。

ネックプロファイルを確認することでそうした企業の戦略まで見えてくるのです。

ネックプロファイルを知りギター史を理解する

フェンダー社のHPにクラプトンモデル製作の経緯が細かく綴られています。

フェンダー社の当時の職人たちは、クラプトンモデルのネックプロファイルをどうするかで4年間も振り回され続けていたのです。

少し話はそれますが、フェンダー社がブラッキーのネックを忠実に再現したものの、クラプトン本人が実はブラッキーと同じネックを望んでいなかったことが、紆余曲折の原因のひとつのようです。
(出典:アンブルースド 80年代のエリック・クラプトン シンコーミュージック)

Eric Clapton Signature | Fender
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文章にはVシェイプ、ソフトVシェイプといった専門用語が普通に飛び交っています。

この記事をもとに、

クラプトンモデルが市販に至るまでをまとめると、

1984年    窮地のフェンダー社がクラプトンモデルの製作を企画

1985年4月   ネック形状はブラッキーと同じにする方針に

1985年5月~  シャープなVタイプにすると決定

1985年末   ネック形状を巡りとん挫

1986年1月   ブラッキーのネックを取り外し正確な模造ネックを製作
        わずかに異なる6種類のVシェイプを製作

1986年3月   シャープVとソフトVの合計2本をクラプトンが選ぶ
       
1986年5月~  シャープVはトリノレッドに
         ソフトVはピューターに組み込みクラプトンに渡す

       ソフトVのピューターがメインとなる

1987年夏   フェンダーの担当者が変わり、シャープVを搭載したものが
       NAAMショーに出品される
→出荷見合わせ

1988年3月   ソフトVに変更され出荷

ネックプロファイルの何たるかを知らなければ全く面白くないでしょう。
プロトタイプのトリノレッドとピューターの話は有名で、折に触れてクラプトン関係の書籍などで紹介されています。

なぜ現行のクラプトンモデルがソフトVなのか理解できましたか?

ソフトVを組み込んだピューターがクラプトンのメインになったことがターニングポイントでしょう。
経緯は「アンブルースド 80年代のエリック・クラプトン」に詳しく書かれています。

マスタービルダーのクラプトンモデル

こうしたエレキギター史を理解するためにもネックプロファイルの知識は必要なのです。

Eric Clapton Signature Stratocaster® | Eric Clapton Signature Stratocaster®
Eric Clapton Signature Stratocaster®, Maple Fingerboard, Midnight Blue

ネックプロファイルを把握することのメリット

長文となってしまいましたので要点をまとめておきます。

■各シェイプの実際の握り具合をおおよそ把握しておけば
 カタログススペックを見ただけでフィーリングが判断できる

■中古品の試奏の際など、ネックの改造や差し替えなどに気が付きやすくなる

■カスタムショップのオーダー品やプロの特注品など
 色や塗装などとは違った規格外の製品への理解が深まる。

■例えばクラプトンモデル誕生の経緯などエレキギターの重大な歴史への理解が深まる

最後になりますが、

メルカリやヤフーオークションなどの個人売買(店もある)で購入するなら、売り主の主観的な判断による音がどうこうよりも、客観的なネックプロファイルを確認することをお勧めします。

きちんと答えられる人は信頼してよいのではないでしょうか。そうでない人は、信頼できないとまでは言いませんが、何かしらの欠陥を見落としているかもしれません。

ネックの質問をすればどのくらいのレベルの持ち主なのかが1発でわかると思います。

ネックプロファイルを理解しているといないでは大きな差があることがお判りいただけたでしょうか。

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