American Vintage II 1957 Stratocaster レビュー

1957strato

Fender American Vintage II 1957 Stratocasterを2022年10月末に購入しました。
実際、手に取ってみての口コミです。

American Vintage II 1957 Stratocaster® | Electric Guitars
American Vintage II 1957 Stratocaster®, Maple Fingerboard, 2-Color Sunburst
アメビン2の画像

このギターは、1957年(日本なら昭和32年)に戻って新品を買ったという疑似体験ができる、ある意味「劇場型ギター」だなーと強く感じています。

クラックやウェザーチェックがいい感じ入った良質な中古が半額ほどで市場に多く出回る中、
新品のアメビン2にどういう価値を見出すかということにテーマを絞ってレビューします。

ポイントは以下の2つです。

塗装の仕上げ(Gloss Nitrocellulose Lacquer)

ネックシェイプ(1957V)と指板のラジアス(7.25″ )

購入を検討されている方の参考になるかと思います。

購入から届くまで

フェンダー社からの正式リリースは同年10月11日の午後10時でしたので、私が手にしたのは最初期ロットです。こうした買い方は新品ならではでしょう。

フェンダーよりエレクトリックギターとベースの新シリーズ『AMERICAN VINTAGE II SERIES』を発表!
フェンダーミュージックのプレスリリース(2022年10月11日 22時00分)フェンダーよりエレクトリックギターとベースの新シリーズ『AMERICAN VINTAGE II SERIES』を発表!
アメビン2の画像

書籍と違い、奥付によって価値が変動するわけではないと思いますが、
世界的なアイテムの「初版が欲しい」という希少性バイアスも私に大きく作用しました。

何より、アメビンというラインナップが消滅していたので、発表を覚知した瞬間から万難を排して買う決意を固めていました。ラインナップの中でも57ストラト一択です。

アメリカのFender Musical Instr. 1295 E Central Ave San BernardinoCA92408という住所から千葉・市川市の本行徳に向けてこのアメビン2が出荷されたのは9月13日。

アメビン2配送伝票の画像

本行徳にはフェンダーミュージック株式会社の配送センターがあります。


そこから札幌市の光栄堂楽器に送られ、東京・目黒の自宅に届いたのは11月3日です。
アメリカから発送されおよそ2カ月弱です。

こうしたことに思いを巡らすことはフェンダー社から新品を買う以外にできないでしょう。

アメビン2の段ボール画像
アメビン2のケースの画像
ハードケースの日付は2022年8月5日

届いて最初にケースを開けた瞬間です(写真下)。

アメビン2の画像

2つの大きな特徴

フィニッシュ

スペックとしては、Gloss Nitrocellulose Lacquer (グロス ニトロセルロースラッカー)と表記されています。

公式発表は見当たりませんが、一番上の塗膜のみがラッカーのようです。

エレキギターの塗装は

「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3つの層があるのですが、
このアメビン2は「上塗り」の工程でラッカー塗装を採用していると思われます
ラッカー塗装の上にポリウレタン塗装はできないからです。

参考文献 エレクトリックギター・メカニズム CHAPTER5-3 「塗装」

いずれにせよ、

グロスというその名の通りかなり光沢が強いです。表面にわずかにザラっとした感じがありあますが、触るとツルツルで見た目は結構テカテカしています。
もちろん、どんなギターでも新品には新品らしい光沢や質感は必ずあるものですが、

アメビン2に関しては少し特別な事情が存在します。

つまり、塗膜の硬化が進んだ良い感じ中古が大量にあることです。
クラッキングやウェザーチェックなどと言われるものです。

アメビン2のライバルは?
アメビン2の画像

先代アメビンの57ストラトは長寿だったこともあり、ほぼ同じスペックのものが、15万円程度で中古ショップなどに並んでいます。豊作貧乏状態だと思います。

それらは、ラッカーが気化して独特な渋い輝きになっているものがほとんどです。金属パーツもいい感じにくすんでいるものが多いです。

ちなみに、

ニトロセルロースラッカー塗装とは、

硝化綿ラッカーと言われ、エレキギターが誕生した時からある塗装。
経年変化によるクラッキングやウェザーチェックが好意的に受け入れられているために
今でも現役で採用
される手法です。

参考文献 エレクトリックギター・メカニズム CHAPTER5-3 「塗装」

つまり、ラッカー塗装は経年変化を味わうためにある塗装と言えます。それがいい感じになった中古が半額以下でたくさんあるのです。
アメリンビンテージシリーズならではの特徴でしょう。

アメビン2の画像
ヘッドの裏もしっかり塗装


アメビンがフェンダーのラインナップから消滅して4年ほどだと思いますが、まさにその間、私にとっては塗装が経年で渋くなった中古のものがアメビンでした。

アメビン2の画像
裏もテカテカ

そうした状況の中、キラキラとテカった新品のアメビンはインパクトがかなりあります。

酸化してないピカピカのストリングガイドも久々です。(写真下)

アメビン2のストリングガイドの画像

「元々はこうだんだんだ」としみじみと感じさせてくれます。

アメビン2の画像
アメビン2の画像

ボディーの塗装もさることながら、指板の塗装が中古ではあまりないような質感です。

アメビン2のネックの画像
指板もテカテカ
アメビン2のネックの裏の画像
ネックも同じ塗装

この塗装をどう思うかが購入するかどうかの判断に大きく関わるのではないでしょうか。

私の場合、57年のスペックを新品で買うという体験に惹かれて購入しましたが、中古市場には魅力的な佇まいの57ストラトが溢れています。

つまり、

アメビンシリーズが、長きにわたってシンラッカーなど良質な塗装を採用してきたことで、
新品のアメビンは年輪を重ねた中古がライバルだと言えます

【楽器の買取屋さん】

当時よりも地球環境が重要視される中、原料や処理方法などは大きく異なると思いますがほぼ同じスペックでギターを作って販売する意義を感じる瞬間です。私はその自己満足の瞬間のために倍の値段を払ったとも言えるでしょう。

他のライバルはというと、

下地も含め全ての塗膜がラッカーじゃないと嫌だというならカスタムショップ製のN.O.S仕様などが視野に入ってきますがが、予算がプラス20万円ほど必要になります。

ヘビーレリック仕様の56ストラトの画像
ヘビーレリック仕様の56ストラト

上の写真はヘビーレリック仕様のストラトですが、絶対に押さえることのない最終フレットの指板の塗装がこのように剥げることはあるのでしょうか。かなり不自然だと思います。レリックはよーく見て選ぶ必要があります。

また、

アメビン2とグレード違いの「ウルトラ」や「アメプロ」はフィニッシュがポリウレタン塗装です。こちらは、一度吹き付けるとしっかり硬化し、経年変化がほとんどありません。

新品だと見た目ではアメビン2の塗装とそんなに大きく変わらないような気もしますが、時間が経つと大きな違いが出ること必至です。アメスタの中古とアメビンの中古を見ているとつくづく思います。

アメプロの画像
アメプロはポリウレタン塗装

そして、

2022年11月現在も現行品となっているアメリカンオリジナルシリーズもアメビン2のライバルと言えるでしょう。3万円以上安く、価格のアドバンテージがありますが・・・

https://www.fender.com/ja-JP/electric-guitars/stratocaster/american-original-50s-stratocaster/0110112824.html
指板とネック

アメビンと同じグレードだったアメリカンオリジナルもスペックとしては同じGloss Nitrocellulose Lacquerでした。しかし、個人的にはアメビンとは全く別なギターとして捉えていました。

理由は、

指板のラジアスとネックシェイプです。

アメビン2の指板の画像
アメビン2の指板

アメビン2の指板のスペックとしては
「フィンガーボードラジアス7.25″ (184.1 mm)」と表記されています。

1フレットから21フレットまで、かまぼこ型というかおにぎり型というかそんな感じになっています。

日本製のものも含め57と名のつくストラトはほぼ全てこのスペックだったのですが、
これまでの4年間アメビンのポジションを張っていたアメリカンオリジナルは違いました。

アメリカンオリジナルストラトの画像
アメリカンオリジナルの指板

アメリカンオリジナルの指板のスペックとしては、
「フィンガーボードラジアス9.5″ (241 mm)」と表記されています。

アメリカンオリジナルの指板

両者の指板の半径(ラジアス)は

アメリカンビンテージ2 →184,1mm

アメリカンオリジナルは →241mm

つまり、単純にアメビン2の方が半径が短いので小さな円になり、丸みが急峻です。
半径が大きくなればなるほど丸みは緩やかになり、
極端なことを言うと地球は球体ですが半径が地球上最長なのでほとんど平地のようになります。
これをパチンコ玉と比べればわかると思います。

アメビン2の指板の画像
丸みを帯びた指板

アメビン2の丸みを帯びた指板でなければ50年代のフェンダーのスペックではないと私は考えます。

学生時代に買ったST57も、街の楽器屋で試奏するビンテージスペックのストラトもこれでした。
弾き心地や音色以前の当たり前のスペックです。

塗装や仕上がりはいい感じでしたがアメリカンオリジナルに食指が動かなかったのはボディー材がアッシュだということ以前に指板のRが原因でした。

と言うより、アメリカンオリジナルが出るまでは指板のRを意識したことはあまりなかったように思います。試奏してみて「なんか違うぞ」と感じたものです。1弦と6弦の弦高が低くなるので押さえやすくはなるのですが。。。

アメリカンオリジナルストラトの画像
店頭に並ぶアメリカンオリジナル

アメリカンオリジナルのネックのシェイプはクラプトンモデルと同じ「ソフトV」。おそらく指板のラジアスの関係でそうなっているのかもしれませんが、「ソフト」のつかないシンプルな「Vシェイプ」でなかったのも敬遠した一因です。どうせならモダンCで良いのでは?と思ったりもしました。

クラプトンモデルにソフトVシェイプが採用されていることには、壮絶な歴史があります。
下記の記事に詳しく書いています。ソフトVはクラプトンモデルだけで十分です。

アメリカンビンテージシリーズに関しては、

アメリカンオリジナルのように弾きやすさや現代性を求めた進化ではなく、当時のスペックの再現性を追求した進化を遂げてもらいたいなと改めて感じた次第です。

本物の57年製ストラト

2022年11月に見かけた本物の57ストラトを紹介します。本物を買うかアメビンにするか迷っている人はいないと思いますが、一応ライバル扱いです。

1957年製のストラトの画像

上の写真は東京・渋谷のイシバシ楽器で見かけたものです。値段は680万円
前オーナーはジョー・サトリアーニだったそうです。使用感があまりなく1957年のものとしては極上品と言えると思います。指板が綺麗です。

1957年製のストラトの画像

こちらも同じイシバシ楽器にあったものです。見た目のコンディションはよさそうで値段は599万8000円。フレットの残りが5割ほどと記載されていました。
(2023年1月に売約済みとなっていました)

2022年現在の1957年製のストラトの相場としては600万円前後だと言えます。

アメビン2のちょうど20倍です。
今、新品でアメビン2を買った人は、60年後の2080年に愛機がどれほどの価値になっているのかと思いを馳せることはできます。

アメビン2とアメリカンオリジナルのスペック

American Vintage II 1957 Stratocaster

Body Material: Alder (803, 849), Ash (807)
Body Finish: Gloss Nitrocellulose Lacquer
Neck: 1-Piece Maple, 1957 “V”
Neck Finish: Gloss Nitrocellulose Lacquer
Fingerboard: Maple, 7.25” (184.1 mm)
Frets: 21, Vintage Tall
Position Inlays: Black Dot (Maple)
Nut (Material/Width): Bone, 1.650” (42 mm)
Tuning Machines: Pure Vintage Single Line “Fender Deluxe”
Scale Length: 25.5” (64.77 cm)
Bridge: Pure Vintage Synchronized Tremolo with Bent Steel Saddles
Pickguard: 1-Ply Parchment
Pickups: Pure Vintage ‘57 Single-Coil Strat (Bridge), Pure Vintage ‘57 Single-Coil Strat (Middle), Pure Vintage ‘57 Single-Coil Strat (Neck)
Pickup Switching: 5-Position Blade: Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Middle Pickup, Position 3. Middle Pickup, Position 4. Middle and Neck Pickup, Position 5. Neck Pickup
Controls: Master Volume, Tone 1. (Neck/Middle Pickups), Tone 2. (Bridge Pickup)
Control Knobs: Aged White
Hardware Finish: Nickel/Chrome
Strings: Fender USA 250R Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges), PN 0730250406
Case/Gig Bag: Vintage-Style Tweed (Crushed Red Interior)

アメビン2の57ストラトのアッシュボディーはフェンダーのオンラインストア限定とのことです。
店頭のものはアルダーボディーです。

American Original ‘50s Stratocaster

Body Material: Ash
Body Finish: Gloss Nitrocellulose Lacquer
Body Shape: Stratocaster
Neck Material: Maple
Neck Finish: Gloss Nitrocellulose Lacquer
Neck Shape: Soft “V”
Scale Length: 25.5″ (648 mm)
Fingerboard Material: Maple
Fingerboard Radius: 9.5″ (241 mm)
Number of Frets: 21
Fret Size: Vintage Tall
Nut Material: Bone
Nut Width: 1.650″ (42 mm)
Position Inlays: Black Dots
Truss Rod: Vintage-Style Butt Adjust
Truss Rod Nut: Vintage-Style Slotted
Bridge Pickup: Pure Vintage ’59 Single-Coil Strat
Middle Pickup: Pure Vintage ’59 Single-Coil Strat
Neck Pickup: Pure Vintage ’59 Single-Coil Strat
Controls: Master Volume, Tone 1. (Neck Pickup), Tone 2. (Bridge/Middle Pickup)
Switching: 5-Position Blade: Position 1. Bridge Pickup Position 2. Bridge and Middle Pickup Position 3. Middle Pickup Position 4. Middle and Neck Pickup Position 5. Neck Pickup
Configuration: SSS
Bridge: Pure Vintage 6-Saddle Synchronized Tremolo
Hardware Finish: Nickel/Chrome
Tuning Machines: Pure Vintage Single Line “Fender Deluxe”
Pickguard: 1-Ply Eggshell
Control Knobs: Eggshell
Switch Tip: Eggshell
Neck Plate: 4-Bolt
Strings: Fender USA, NPS, (.010-.046 Gauges)
Case/Gig Bag: Vintage-Style Hardshell

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コメント

  1. y より:

    勉強になりました。ありがとうございました。
    アメビンⅡではないですが、上塗りラッカー塗装のギターを所有しています。トップラッカー塗装の経年変化ってどういった変化になるんでしょう?
    ラッカーが黄変したりすることはあっても、着色層以下がポリだとオールラッカー塗装のように渋い感じで塗装が剥げたり、ウェザーチェックがはいったりしないんだろうなと思っています。
    色々調べてみても、人によって意見が違っていて、「トップラッカー」と言っても各ギターの細かい塗装の仕様で変化の仕方は変わっていくんですかね。
    いずれにしても、ビンテージスペックを新品で所有する良さはアメビンⅡの魅力ですよね。ますます欲しくなってきました…。

    • kim3des より:

      y様 ご覧いただきありがとうございます。そろそろ購入して1年になります。何か変化を見つけたらレポートしようと思っています。

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