Takamiyこと、THE ALFEE 高見沢が80年代に作り上げたエレキギターの音色をコピーするために必要な知識やマストアイテムを紹介します。そして、86年夏のイベントでのバックステージを取材した記事を元にTakamiyの音作りのプロセスを解説してみます(超重要です)。
この記事は80年代でっくくっていますが、
アンプまわりを例にとると、83年は1959オンリーだったものが88年ごろには
■マーシャル2台、リベラ1台、メサブギーのコンボ2台
■キャビネットはマーシャルのBタイプとメサブギーが2台ずつ
という陣容で、
5年ほどの間に、近年とそう変わらない大規模なシステムになっていたことが分かります。
この記事は「知識編」としています。準備出来次第「実践編」を掲載しようと思っています。
各機材
アンプの種類
80年代には主に5つのアンプが登場します。
Marshall 1959 Super Lead
1983年の写真から判断するとこのアンプで間違ないと思われます。
ヴァンヘイレンが使っていたことで有名ですが、Takamiyの師匠、ジミーペイジなど、多くのスーパーギタリストが使ったアンプです。100Wでマスターボリュームがないので歪ませるには大きな音にしないといけません。82年の写真でその姿を見ることができます。86年の春ツアーいっぱいまでこれを使っていたと思われます。
向かって左側の電源系のスイッチのノブが金属ではなく黒いプラスティックぽい素材です。
1982年
Takamiyの右太腿の後ろに1959が見えます。1台なので最初から最後まで歪みは一定だったと思われます。ALFEE HISTORYに収録されている夏のイベントの映像を見ると、その時はジャズコーラスのような歪まないアンプを使っています。
TakamiyのギターはSG2000
1983年
83年にはヘッド4台、8つのキャビネットに増強されます。リードとバッキングでそれぞれ2台づつになっていると思われます。
4台のうち向かって左から2番目のやつは、インプット1と2にたすき掛けでケーブルがさされています。1959でローを補う定番の使い方です。
キャビネットは下がBタイプ(ベース)、上がAタイプ(アングル)です。
武道館公演のステージには大量にBタイプのキャビネットが置かれていまが、通電して稼働していたのは4台アンプヘッドと8つのキャビネットだけだと思います。
1984年
ステージ上のキャビネットの数が増えますが稼働しているのは83年と同じだと思います。かくれんぼしている人が発生するほどの物量となります。
これとは別にキャビネットを3つスタックしている写真や映像もあり、この頃は、重低音でメタル路線と音と言えるでしょう。キャビネットは積めば積むほど大きな塊となり、低音が増します。
1985年
85年はキャビネットの置き方が変わります。スタックをやめてAタイプ、Bタイプの両方を地面に置きます。2つのキャビネットが物理的に繋がって出ていた音から、単体の音に変わり、音的にもメタルぽい雰囲気が減ります。
という側面もありますが、この年は、都会のビル群のような背景も込みでひとつのステージという感じになっていて、手前にキャビネットをスタックスすることは物理的にNGだったという見方もできます。
アンプヘッドが真ん中の2台のキャビネットの上に置かれています。もう2台はバックステージでしょう。
坂崎寄りが、Aタイプです。赤丸部分でAとBの違いがわかるかと思います。
Aは半分が上に向かって音がでるので、マイクで収音した時に違いが出ます。
桜井側にも同じキャビネットが4台置かれているのですがアンプヘッドは2台なので、ステージ全体の見た目のバランスをとるためのダミーだと思われます。
86年3月に出た「風曜日 君をつれて」のテレビ出演映像で1959が確認できるのですが、これ以降は姿を消します。(下記に掲載していますが、You Tubeに動画があります)
Marshall JCM800 2203 (出力100W マスターボリューム付き)
86年夏のイベント「TOKYO BAY AREA」のステージにJCM800 2203が登場します。
なぜか現場でのリハーサル中の写真には上記の1959が写っているカットもあり、まさにこのイベントが入れ替えのタイミングだったと思われます。
「TOKYO BAY AREA」を境にギターの音が変わったと言って良いかと思います。
こちらは、86年春の映像だと思われますが、1959と2203が2台ずつが併用されている貴重な一コマです。
1986年
4つのヘッドをリードとバッキングで2台づつという使い方は83年以来変わっていません。キャビネットの置き方は83年同様のスタックに戻ります。
この時のアンプのパラメーターは
■ベース 5
■ミドル 5
■トレブル 4
■ボリューム 10
■プレゼンス 0
■マスターボリューム 4
つまりフルテンにして(プリアンプの歪みMAX)思いっきりアンプをドライブさせていたのです。
こうした設定でチューブアンプの粘り感を引き出すことが高見沢サウンドをコピーする肝です。
1988年
下の写真、メサブギーのコンボアンプの後ろに同じくメサブギーのキャビネットが見えます。半オープンタイプでスピーカーは4発です。アンプヘッドは変わらずマーシャル4台で、マーシャルとメサブギーのキャビネットを切り替えて使っていたものと思われます。
ちなみに、メサブギーの向かって右のキャビネットを見るとわかると思いますが、上半分のスピーカーが見えていて、下半分は蓋がされています。つまり、上下のどちらをor両方から収音するかでキャラが違うのです(下の方が低音が出る)。
ギターの出力先を変えてアンプを切り替えるのではなく、アンプの出力先を変えてキャビネットを切り替えるわけで、アンプが複数台あることを考えると下流で枝分かれする大掛かりなシステムになったと言ってよいかと思います。
GALLIEN-KRUEGER GK250ML
1986年の写真で確認できます。
デジタルディレイSDE3000を2個掛けし(ロングとショート)、その間にプロセッサーSPX90を入れた接続で使用していたようです。
クリーン、クランチ用と言って良いでしょう。コンボタイプなので低音は少なく、バラード系楽曲のバッキングで使用していたということです。コードストロークやアルペジオで使っていたと思われます。
MESA BOOGIE MK-III SIMUL CLASS
87年から88年春までにGALLIEN-KRUEGERが姿を消し、このアンプが登場します。サイマルクラスと言って、4本の真空管を2本ずつ別の動作にする仕様です。フェンダー系を元ネタにしたコンボアンプで、クリーンからドライブまで多彩な音色を作れるアンプとして当時はやっていたようです。
収音のマイクがそれぞれにあるので、2台を同時に使ってステレオ出力していると思います。
イコライザーの見た目をV字型になるよう調整して、つまり、中音域を極端に減らして低音と高音を増やしてドンシャリなサウンドを作ることがこのアンプの使い方の流儀だったようですが、そうしたことはやっていないようです。
RIVERA TBR-1 SL
1988年春からラック内に設置されます。80年代にフェンダー社でアンプを設計してたポール・リベラさんという技師が独立して手掛けたフルチューブアンプです。
ずばり、フェンダー系のクリーントーンを出すために導入されたと言ってよいと思います。
89年に発表された「Heart Of Justice」のカッティングはストラトとこのアンプ、そしてマーシャルBタイプのキャビネットの組み合わせで間違いないと思われます。
CAE 3+SEが導入されるまでクリーンはこのアンプだったのではないでしょうか。
1986年のシステム
1986年にヤングギターが取材したTakamiyのシステムを詳しく見てみます。プリアンプで歪ませた音を作り込んでいる近年のシステムと違って、アンプの手前で全てのエフェクトを完結させるシステムで、
リードはディストーション、バッキングはドライブというのが基本のようです。
PSE40Aというヤマハのペダルシステムを2台使っているのが面白いです。
リード
ロックマンのディストーション、そして同じくロックマンのコーラスとディレイ(サステイナーなども搭載)をかけてアンプに入力。シンプル極まりないです。この頃のリードはディストーションサウンドです。
ディレイを空間系のエフェクトとセットで使うことは鉄則です。
バッキング
オーバードライブ(BOSS OD-2)とコーラス(ヤマCH-03)をヤマハPSE40Aで制御し、ロックマンのマルチエフェクターと切り替え、もしくは併用していたことがうかがえます。
このPSE40AはTakamiyの足元に置かれていて、自身でコントロールしていたとみられます。
ALFEEサウンドの要であるエレキのバッキングはOD-2でドライブさせた100Wマーシャルの音なのです。
PSE40Aは4つのコンパクトエフェクトを搭載できるのですが、撤去されていてOD-2とCH-03用に制御機能だけを使っていたようです。
私は詳しくありませんが、ヤマハPSE40Aは奥が深そうです。
クリーン
エフェクトラックに接続された別のPSE40Aにギターからの信号が入力されます。
こちらのPSE40Aは4つのモジュールが組み込まれています。
PSE40Aを経て、
ロックトロンのパワープレー(マルチエフェクター)、
デジタルディレイSDE3000(ロング)、
DSPのSPX90、
デジタルディレイSDE3000(ショート)
ギャリエンクリューガーのアンプへとつながります。
アンプの歪みは公演中に変えられないので、
ロックトロンのマルチエフェクターで音のキャラを変化させていたようです。したがってこの系統の音は必ずしもクリーン専用とは言えません。
ツボなのは、ディレイの2個掛け、かつ間にSPX90という空間エフェクトのDSPを挟んでいたことです。
つまり、ロングディレイと空間系エフェクトで作った音にショートディレイをかけていたことになります。
Takamiyのクリーントーンをコピーする大きな手がかりと言え、機材は違えど、今でもこの音作りを実践していると思われます。
音色をコピーするには
狙う音を決める
Takamiyの80年代の音色をコピーするには
■コピーしたい対象が、
ドライブトーンなら86年以前の1959の音なのか、86年以降の2203の音なのかを決める。
※これで7割はコピーできたも同然
■さらにクリーン、バッキング、リードなのかを絞り、ブースターがディストーションなのか、
オーバードライブなのかを判断。
■ギターの種類はシングルかハムかなどピックアップで決める。
■ギターのボリューム、トーンはMAX。
■低音のバッキングやリフは必ずリアピックアップを使う。
高音域のソロは状況次第でフロントで弾く。全部リアでも可。
■ディレイなど含めエフェクトはすべてアンプの手前でかける
■3段積みから全部平置きまで、
Takamiyはキャビネットのスタックにこだわっている。つまり低音の量を気にしている。
■クリーントーンは基本的にコンボアンプを使い、ディレイ2個掛け&空間系エフェクトが必須。
ステレオ出力もマスト。80年代終盤はRiveraのアンプヘッドも。
近年のディレイの設定はロング420ms、ショート20ms。フィードバックのパラメーターは曲次第。
87年以降、曲のBPMに合わせたテンポディレイが登場する(ディレイもTC2290に)
■フレーズ自体に超絶難易度のものはないが、
Takamiyの身体能力は高く、コピーのハードルは高いものと心得る。
そう簡単にTakamiyのように歌えないのと同じですよ。
近年のTakamiyの機材も参考にすると良いかと思います
音源をしっかり聴く
Takamiyの音色コピーに有益なのがこの「THE BEST」です。お分かりかと思いますが純粋なカラオケが入っていて、メロディーをストリングでなぞったりしておらず、演奏がかなりクリアに聞こえます。
メリーアンのサビのバッキングはこの音源を聞いて初めて解りました。
ちなみに、このアルバムで新録の「星空のディスタンス」と「夢よ急げ」はギターの歪み方が90年代のそれです。別途詳しく記事を書こうと思います。
あとは、2004年に発売された「HIT SINGLE COLLECTION 37」がおすすめです。80年代のシングルA面のおよそ半分がLAのスタジオでリマスターされていて、音質が明らかに良くなっています。
残り半分は新録音なので2000年代の音源と判断すべきでしょう。
ALFEE HISTORYにはTakamiyがスタジオでジャクソンのピンクのランディーローズをピックアップを変えて弾くシーンが収録されています。ディストーションサウンドにディレイがかかったサウンドです(フィードバックをゼロにしたダブリングぽい音)。
白いキャビネットを平置きしているので1985年の収録だと思います。
アルバムのコンセプトなどを噛みしめることも大事です。
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