SINGLE CONNECTION & AGR – Metal & Acoustic – レビュー 

THE ALFEE

2023年12月20日に発売されたTHE ALFEEの「SINGLE CONNECTION & AGR – Metal & Acoustic -」のレビューです。

レビューと言いつつ、

主にAGRのMetal3曲について、速さやキー、オリジナルとの違いなどを勝手に解説しています。つまり、レビューと言うよりは、このアルバムをより深く楽しむためにの解説だと思って頂ければと思います。

ちなみにこれを書いている私ですが

初めてTHE ALFEEライブを見たのが2016年暮れの大阪城ホール、明けて2017年、倉敷公演で生で聴くも「あなたに贈る愛の歌」はパスして、同じ年の12月に発売された「人間だから悲しいんだ」のシングルと、直後の武道館で演奏された同曲あたりから本格的なファンになった者です。

いわゆる出戻りではなく、子育て(息子1娘2)がひと段落して「新規ALFEE推し」になった40代男です。

つまり、新参者ですが2023年は18本のライブを見て、稚拙ながらレポートもしています。それを踏まえた上で、今回のアルバムについて音楽オタク的なレビューをしてみようと思います。

AGR – Metal & Acoustic –

まずは、Metal & Acoustic です。

大事なことがライナーノーツに書かれている

GarageBandで計測しました

メタル3曲は「初出を上回るほどのスピーディーなリズム」と書かれていますが、その通りです。AGR – Metalは何が一番違うかと言うと曲の速さです。これに尽きると思います。

ここに目をつけたということは、このライナーノーツを書かれた人は音楽をやっているひとなのでしょうか。

50th Anniversary Ver.とは

メタルのほうにつけられた「50th Anniversary Ver.」というのはそれにふさわしいタイトルだと思います。3曲はいずれもテンポを速くしてキーを半音~1音下げてその分ボーカルがパワフルになっています。これが功を奏したといって間違いありません。

坂崎の裏声を含めギリギリのハイトーンで歌うのが売りだった状態からハイスピードかつパワフルに歌唱するという表現方法に生まれ変わったといって良いでしょう。それこそが50th Ver.だと思います。

低音部の音とMIXが変更

全体的にスネアをはじめとするドラムとベースの抜けがこれまでと違います。低音部が大きく変わりました。ベースは少し後ろに下がって、アタック音を極力なくし重低音を強調した感じです。歌中はボーカルが近く、ギターソロはギターが近いミックスになっています。

つまり、より中音域が強調されたミックスになっています。メリハリがあり目の前で演奏しているかのような音像になっていると感じます(実家のSony ZS-M5で聴いています)。

各曲レビュー

BPM🟰1分間の拍数です。つまり、客としては1分間に何回拳を震わせるかです。キーは、アルファベットが進むにつれ高くなります。FよりGのほうが1音高い声で歌うことになります。

悲劇受胎 (50th Anniversary Ver.)

BPM 冒頭  80 本編 160
キー  F♯m

オリジナルはBPM158、キーは半音高いGmです。この曲に関してはオリジナルの時点でかなり早く、今回は1分間に2拍の微増となりました。

このアルバム発売の3か月近く前、10月1日の越谷公演で初めて聴きました。半音下がることによっていい具合に重低音化されています。

音源にもなっている2019年幕張の演奏がオリジナルに近いアレンジだということを考えると、今回は近年になって練り直したものでしょう。何か深刻な事態でも発生したかのようなオープニングが最高で、2023年の秋ツアーではペランペランな「府中捕物控」のあとに演奏されたのでフリ幅MAXでした。

この曲に限らず全般的にライブで演奏することを意識したアレンジではないでしょうか。つまり、いろいろな箇所が簡略化されていて、歌中のエレキギターは極力1本に聴こえるような感じになっています。

ライブ同様、ガットギターではなく普通のアコギで、オリジナルの間奏にあるスパニッシュのようなフレーズはディミニッシュコードのアルペジオに置き換えられています(最後のフレーズがライブでは少し違っていました)。

秋ツアーでは一貫して夏のイベントから登場したEMG搭載のギブソンの青いFVが使われていました。レコーディングもこれを使ったのかなーと思いながら聴いています。

 NOBODY KNOWS ME (Acoustic Ver.)

2022年春ツアーで聞きました。

個人的にはこの曲がこのアルバムのナンバーワンです。なんといっても坂崎のボーカルです。

84年のオリジナル当時は坂崎も30歳くらいで、歌詞の内容と青年坂崎がすごくリンクしています。

40年近くが過ぎ、

このテイクは坂崎(69)が歌っています。にもかかわらず、69歳が歌っているとは思えないほど、まじめな青年が日々虚しさを感じているリアリティーが普通に伝わってきます。

坂崎の衰えないドライな声と素晴らしい表現力が味わえる曲だと言えます。これを維持できるかがALFEEの生命線なのだと思います。一般の約70歳の人には無理でしょう。そんなことを考えさせられます。

長年現役でやっているバンドにしかできない芸当です。選曲の勝利とも言えそうです。こう言ったこともまさに50th Anniversary Ver.なのではないかと思うきょうこのごろです。

鋼鉄の巨人(50th Anniversary Ver.)

BPM 146
キー  Fm

84年のオリジナルはBPM138なので体感的にかなり速くなった印象です。一方、キーは1音低くなりました。しかし近年のライブテイクではBPM150、半音下げのF♯mという音源もあり、新録するためにスピードやキーを変えて試行錯誤していたことが伺えます。

ライブでは、9カ月前の春ツアー川口リリアから演奏されています(1曲目でした)。

キーが低い分ボーカルがパワフルになりました。特にBメロのTakamiyのボーカルが力強い‼️。オリジナルは「目を覚ませ」の「目」がHiHiE♭なので・・・1音下がることで普通に歌えるようになったのだと思います(低いと言ってもかなり高いです)。

更に、シンセの派手なオブリガードが細かく入るなど、疾走感だけでなくリッチな感じもプラスされ作りこんだサウンドが演出されているように感じます。

サウンドが足された一方、イントロのバスドラの2小節目最初が1つ足りません。たかがこれだけですが印象がだいぶ違います(私だけ?)。

エレキギターはMAXまで歪ませていると思います。GAINをフルテンにするとこうした低音が抜けたような激歪になるデスメタル用アンプがあります(何かは忘れました)。

そして何といっても・・間奏最後の坂崎のアコギです。

84年のオリジナルはダブリングのようなエフェクト?がかかりハモったような聞こえ方で、不思議な感じが満載です(何回聴いても謎です。実際これは何?2台?)

当時、この2小節で坂崎が神格化されたのではないでしょうか。スピードを落とすとキーも変わるレコード時代に速いテンポも相まってコピー不能な魔法のフレーズに聞こえます。

それが一転、

クリアでアコギのボディーが感じられるような音になり、ゆっくり再生して1カポにしてと丁寧に音を拾っていけば開放弦を利用してスリーフィンガーで弾いているのがなんとなく判ります。坂崎は神ではなくハイフレットと開放弦を組み合わせるアイデアと正確なテクを持ち合わせた職人だったのです。

レコーディング技術の大きな進歩を感じさせる1曲ですが、恐るべきハイトーンのボーカルと、坂崎の靄に包まれたような謎のフレーズが収められたオリジナルも魅力たっぷりです。結局のところ、神懸っていた84年バージョンが今回、現実的な範囲で再現されたのだと思います。

ひとりぼっちのPretender (Acoustic Ver.)

これは2022年の天地創造ツアーでのライブ音源も発売されています。そう考えるとライブが最初で、後追いで音源化した体だと言えます。

これはなんと言ってもベースが変わりました。オリジナルはほぼ全編シンセベースが使われていて、曲を通してで機械的で冷淡な感じだったのですが、今回は人間的な感じになったと思います。

ライブ同様、すべてアコギが使われているようです。

人間だから悲しいんだ (Acoustic Ver.)

鋼鉄の巨人と同じく、初めて演奏したのは9カ月前の春の初日 川口リリアでした。これは初日からTakamiyが自画自賛していて「なぜこのアレンジでレコーディングしなかったんだ」と言っていたのをはっきりと覚えています。その伏線を回収した形となりました。

歌直前のシンセのメロが、オリジナルは半音ずつ上がって行くのですが、今回は平坦な感じになっています。

 Count Down 1999 (50th Anniversary Ver.)

この曲が一番違うぞと感じた人が多いのではないでしょうか。爆速になりました。

BPM イントロ 88 本編 164BPM
キー E♭m

BPMですが、オリジナルはイントロが96、本編が153です。したがって今回は大幅に速くなった上、冒頭の哀愁漂うメロとのメリハリが大きくなりました。キーはオリジナルのEmから半音下がりました。

あと、本編イントロのメインのギターリフの前のパワーコードのEm、Dのフレーズが省略されています。

2022年12月29日のファイナル、大阪城ホールの大ラスで初めて聴きました。

1年前にアレンジが完成していたというよりは、長きにわたるライブ演奏で完成されたものを音源化して固定したのだと思います。ちなみに、メインのギターリフが始まる前のEm、Dのパワーコードは95年のLIVE IN PROGRESSの時点で省略されています。

楽曲としては、歌が始まる前の哀愁漂うガットギターのメロディからいきなりエレキが入ってくるところがカッコいいと思います。Aメロの2声コーラスもこの曲ならではではないでしょうか。

エレキのバッキングが8分音符ぶん歌より前に始まるのが大きなポイントです(オリジナルも同じ)。
そのあとはひたすら爆速16分音符を刻み続けながら意味不明な歌詞を歌うと言う流れが最高です。

SINGLE CONNECTION

続いてSINGLE CONNECTIONです。

CONNECTIONの意味

まず、アルバム名が「SINGLE HISTORY」でないことから分かるように、すべてが網羅されているわけでなく、一部のカップリング曲や、ライブテイクがごっそりと収録されていません。

そのうち収録されていないカップリングは、

■創造への楔 
■風の翼 
■LOVES FOR ONE 
■もう一度ここから始めよう

の4曲です。

つまり、大阪国際女子マラソンのテーマとなった楽曲が収録されていないのです。おそらく「Last Run!」とすみ分けた体になっているのだと考えられます。もれなくタイトルがかっこよく、個人的にはよく聴いているので少し残念ではあります。

仮に、2013年~2021年の9年間にリリースのシングルに収録された全曲を収めて「History」にすると48曲に上ります。5枚組レベルの物量です(記事の最後にまとめておきます)。

今回の、SINGLE CONNECTIONですが、

「網羅」という側面からみると中途半端です。しかし、曲を絞って「CONNECTION」にした意味を見出すことができるヒントがライナーノーツに書かれていました。

リリースの時系列を崩し、プレイリスト的な発想からシングルベストに新たな物語性を与えられたらと考えた

SINGLE CONNECTION & AGR – Metal & Acoustic – ライナーノーツから

つまり、

曲どうしの繋がり(CONNECTION)を通して新たな物語を生み出すというのが命名のきっかけのようです。

このCDは通しで聴いて初めて制作者の意図が理解できるのか?と思いきや、

まず、冒頭3曲を聴くだけでも高見沢、桜井、坂崎と順々にリードボーカルが変わり、CONNECTIONが十分に感じられるのです。

そして、中盤以降はハードなブルースロックの「太陽と鋼の翼」の直後にフォークな「光と影のRegret」が来たかと思えばメタルな「振動α」の暗黒イントロが襲い掛かってくるなど、どこから聴いても曲調にストリーがある展開になっています。

ライナーノーツには更に「オリジナルアルバムに勝るとも劣らない物語性が宿る」と書かれていますが、その前にメリハリのついた音楽性の豊かさが如実に伝わるのです。それがあってこそ、聴く人それぞれのシチュエーションや立場などで「物語」が生まれやすい状態になっているのだと思います。

更に、歌詞カードを見ながら聴けば本来このアルバムが目指した「物語」が存分に感じられるのだと思います。

(それでもやっぱり全網羅のHistoryは出してほしいです。何形態あろうが全部買います)

この素晴らしき愛のために (2023Mix) の楽しみ方

ずばり言うと、このMIXはライブにおけるALFEEサウンド構築の手法が応用されていると思っています。

どういう意味かというと、

2023MIXとなっていますが、ぱっと聴いてわかる範囲で、入れ替えているのはエレキギターだけだと思います。

サウンドとしては曲冒頭からのサビのバッキングが16分音符を刻んでいて、4分音符と8分音符を組み合わせたオリジナルとは疾走感が大きく違います。

さらに細かいところではAメロのバッキングがテンポディレイのアルペジオだったり、ギターソロが2声になっていたりします。

音色としてはアンプもキャビネットもセッティングも違うと思います。今回は近い音像で重低音かつ歪みも増しています。

そして大事なのはボーカルをはじめ、ほかの楽器は変更なしという点です。

つまり、

「ほかのパートはそのままでエレキギターだけが違う」のです。

これはTHE ALFEE Takamiyがライブで実践してる専売特許です。ライブでは同じ曲でも会場によってエレキギターがじゃんじゃん変わります。

下記の2つのリンクはDNA Odysseyの演奏ですが、注目するのはTakamiyのギターです。
上の無観客の方は57年製ストラトキャスターを使っていて、下の幕張メッセではESP Ultimate Arcangelを使っています。

例えば、57年製のストラトを使っているほうはイントロでオープンコードのストロークが入るのに対して(55秒〜)、ESP Ultimate Arcangelではパワーコードです(1分12秒〜)。さらにソロではアーミングが入ります。そもそも音がかなり違うのが明らかです(見た目はもっと違う)。

こうして、同じ曲でもツアーごと、会場ごとにエレキギターを変えることによってサウンドを大きく変えるのがTHE ALFEEのライブの大きな特徴で、毎回ギターを変える曲もあります。

これを今回の2023Mixにあてはめると、

エレキギターだけ最新で他は6年前のままなのです。これはまさにライブのサウンド構築手法を応用したと言って良いでしょう。

同じ例では、 「The 2nd Life -第二の選択-」があり、シングルとアルバムでエレキギターを入れ替えています。調べれば色々出てきそうで、古いものだとPageOne収録の「See You Again」がこれに該当しそうです。

参考 SINGLE COLLECTIONにしてみると

コネクションではなく全網羅の「SINGLE COLLECTION」だったばあいの収録予定曲をあげておきます。

リリース形態が通常版に加えて初回限定3種なのでこの物量です。

ちょっと懺悔になりますが、網羅されていない中途半端な収録曲を見て予約購入はやめました。それでも頑固ファンとしてのささやかな抵抗はやめて、発売から9日後の12月29日の大阪城ホールのCD売り場で購入しました。帰りの新快速の車内でライナーノーツのTakamiyのことばを読んで反省しています。

私が日常的に聞いているのは「三位一体」以降と今回収録された楽曲がほとんどなので、なんだかんだ言って今回のリリースはうれしい限りです。

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