2023年3月16日、フジテレビの配信番組「お台場フォーク村NEXT 第142夜」の後半で「幸ちゃんと丸山さんとD-45へきくちから」の収録が配信されました。そこで語られたD-45の話をまとめています。
この記事について
3月30日に本番のOAがあるとのことですが、それを前にマーチンのD-45について勉強したいと思い記事にしてみました。番組で語られたD-45などのトリビアを整理しています。
おもしろいのは、収録中の生カメラがそのまま配信されたことです。スイッチングはされていましたが編集されていない?ので、当該のギターのUPのカットなどがありません。それでもカメラの前で起きていることが生で配信されていることになぜかワクワクしました。
テレビの「テレ」は遠くという意味で、遠くのことが自分の視界で確認できるというテレビの本来の役割をなしているな~と思いました。もちろん、きちんと編集されて当該ギターのUPがインサートカット?で入っていたほうがクオリティは高いと思いますが。
おそらく今回の収録は素材のパーツとなるのだと思います。
本題に戻って、
この「幸ちゃんと丸山さんとD-45へきくちから」の収録ですが、
坂崎が半音下げのD-76を携えて歌った「My Life Goes On(DMB Ver.)」のあとに直結して始まり、生映像が配信されました。前述のように視聴者が見たのは編集する前の素材と言えるでしょう。
したがって、事実関係が不確かなものや誤認もあるかもしれません。
特に気になるのはワシントン条約に抵触する象牙のブリッジをボディーからばらして判子業者に輸入してもらったというくだりは物言いがつかないか心配です。判子業者を使えば象牙を輸入できるという捉え方もできてしまいます。
登場したマーチン 「D」-45について
「D-45」という機種名が番組タイトルに冠されていますが、スタジオに登場したDサイズの45は41年製 68年製 81年製 D-45S(2008年製)の4本でした。
ほかは1-45や5-45、O-45、そしてOOOOサイズのMC-45などで
まさに激レア特注マーチンが勢ぞろいした感じです。
これらの珍サイズの45ですが、マーチン創立150年の1983年に顧客から特別にオーダーを受け製作されたものが多くを占めているようです(戦前の本物を除いて)。キーワードは1983年と言えます。
冒頭、坂崎が「歴史的」と番組を評していましたがそれは間違いないでしょう。
「世界で1本」をこれだけ集めるとなると金の力だけではどうにもなりません。
7-45は音楽シーンの第一線でアコギを弾き続ける坂崎だからこそGETできたのでしょう。
あと丸山さんというコレクターが激レア機種をもっているのも金の力だけではないことが想像できます。
4本のD-45うちの1本である1981年製のものについては、今回の配信では触れられませんでした。30日の本番に期待します。
坂崎がナビゲーターを務めるラジオ番組「K’s TRANSMISSION」によると、
ここ最近、名古屋市の楽器店から購入したようです。指板インレイがスノーフレークなのでプリウォーモデルの復刻版とみましたがどうでしょうか?
D-45の基礎知識
まずは坂崎村長が自筆のホワイトボードを背に熱く語ります。
鼻腔の調子がすぐれない中、「My Life Goes On」を生で歌ったばっかりですが、D-45のことをしゃべりたくて仕方ない様子。坂崎を見ているとフォーク村よりこっちがメインのような感じです。
■D-45は1833年に創立されたマーチン社の最上級モデル
■マーチン社のギターは、
ハイフンの前のDやOはボディーサイズを表していて
その後の数字で材質を定義している。
■代表的なサイズ表記はD、OOO、OO、Oなど
代表的な素材表記は18、28、35、41、45など
(以上 坂崎談)
ギターメーカーのTaylorも数字が先ですが同じような分類のしかたをしていると思います。
合理的な国のアメリカだけでなく
エレキギター業界だとイギリスのマーシャルのアンプも型番で仕様がわかる分類をしています。
例)JCM800はJCMシリーズの100ワット、マスターボリューム付き
ちなみに、フェンダーやギブソンも型番に数字が入りますが、それは1957や1959など西暦を表していて、直にスペックを定義しているわけではありません(それでも57と言えばVシェイプのメイプル指板で21フレット仕様、62ならローズのスラブ張りなどと一瞬でわかりますが・・)
戦前のD-45は91本のみ
坂崎村長の解説は続きます。
■戦前に作られたD-45は91本のみで現存するのは70本ほどか。
兄弟機のOOO-45は123本作られ、ともに「プリウォー」と言われる。
■プリウォーのD-45は、2011年のヴィンテージギターランキングで1位に。
その時の価格相場は25万ドル~40万ドル(現在はさらに高額に)
(以上 坂崎談)
ここでしゃべりたさそうな丸山さんが解説。
コレクターというと気難しい印象ですがそんな雰囲気はありません。
■1933年~1938年まではカスタムオーダーのみで生産され
1938年~1942年まではレギュラーラインで作られた。
→1938年までは注文があった時だけD-45を生産という意味です(ブログ筆者注釈)
■D-45はパールの装飾が大きな特徴で、戦前は日本から原料を輸入していたため
太平洋戦争が開戦した1942年以降、生産ができなくなった。
戦前のインレイはスノーフレイクです(ブログ筆者注釈)
■プリウォー91本のうち10本ほどが日本にある。
丸山さんが「金持ちですね~」と発言し、「あなたでしょ」と言いたげなももクロがドン引きする。
(以上 丸山さん談)
坂崎所有のD-45はレア中のレア
レコーディングでD-45を使う坂崎が愛機を解説
■D-45は戦後1968年に復活 初年度は67本のみの生産。
そのうち1本を坂崎(私)が所有。
(以上 坂崎談)
■D-45と言えど、ファクトリー生産である以上、扱いやすい柾目が多い中、
坂崎所有のものは「板目」。これも初年度のなかでは1本しかないのでは?
(以上 丸山さん、坂崎談)
ことあるごとに雑誌などに登場する坂崎のD-45ですが、そもそもレアなうえ、材質もレアなことが分かりました。
直近では、THE ALFEEの2022年の楽曲「Circle Of Seasons」でオープンDにして使われています。
そして、1968年製造で、坂崎の所有しているものとシリアルが1番違いのD-45が市場に流通し、販売されたことが2月17日の坂崎のラジオ番組で紹介されました。紹介というか、「俺が買ったわけじゃない」という弁明でした(笑).
1千万円に消費税というのが相場のようです。
坂崎のやつはアメリカのサイトで見たときは3万ドル(400万円ほど)だったとのことで、
マーチンのビンテージ物は異常に高騰しているようです。
今マーチン社があるのはMC-45のおかげ
いよいよレアな機種が取り上げられました。所有者の丸山さんが語ります。
■70年代末、YMOなどテクノが世界を席巻し、アコギを弾く人が激減。職人が辞めたこともあり、マーチン社の年間生産台数は3000台ほどに低下(今は月間数万本)。
■マーチン社は厳しい状況になり、1983年(150周年)には銀行にそっぽを向かれ資金繰りが破綻。
そうした中、ジョン・バイデン・ホープさんという投資家が融資して、マーチン社を救済した。
■そのお礼にホープさんにマーチン社が製作したのがMC-45。世界に1本しかない。
感謝の意を表したギターで、職人の技術の粋を集め、ツリーオブライフの根元と花が
ハート形の意匠になっている。こんなギターはマーチン社といえど唯一。
■(シングル)カッタウェイの45もこのギターだけ。OOOOサイズでDよりも少し小さい。
(以上 丸山さん談)
「なんでそれがここにあるの?」
「誰ですか?」
(以上 ももクロ談)
これに対して、
本来マーチン社のミュージアムにあるべきギターだが、
ホープさんの家族が売りに出したと思われ、ここにある。
坂崎に貸してたくさん弾いてもらった。
(以上 丸山さん談)
マーチン社の謝意をよそに、ホープさんは投資家なので、
同社からのリターン以外興味はなかったのではないかと思います。MC-45を売却したお金を元手にどこかの企業に投資したことでしょう。
(以上 ブログ筆者の推測)
このギターは2014年に坂崎に貸し出され、THE ALFEEのステージ上に登場しています。
ちなみに動画を見るとTakamiyはテリーズテリーを弾いているようです。
「あの素晴らしい愛を」 5-45
5-45はD-45の半分のサイズ
大きさを示す数字の分母が10だと推測されます。(ブログ筆者注釈)
■スタジオにあるのは、
加藤和彦さんが使っていたもので、「あの素晴らしい愛をもう一度」の
歌詞を印刷した紙が上側のサイドに張り付けられている。
加藤さん曰く、「自分のパートは覚えていないから」なんだそうです。
(以上 丸山さん談)
■正しくは自分のパートは覚えてなくても歌わないといけないから?という意味でしょうか。
(以上 ブログ筆者の推測)
盗まれた機材のカタに・・7-45
7-45はD-45の8分の7のサイズ
分母が8になっています。法則はあるのでしょうか?1983年製とのこと。
所有者の坂崎が熱弁をふるいます
■当時、アメリカでカメラマンの仕事をしていた須貝重太さんが
懇意だったマーチン社の社長に「風呂上がりに弾きたい」とオーダーして作ってもらった45。
■その後、須貝さんはカメラ機材を盗まれ、それを補填するために
7-45を売りに出した。誰だかわからない人に売りたくないという意向で、
マーチン社の社長が坂崎を仲介したそうです。
(以上 坂崎談)
ヤマハのムック「THE ALFEE 坂崎幸之助 ギター音楽館」にも
同じ内容が記されていますが、須貝さんが機材を盗まれてやむにやまれず7-45を
手放したというのは初めてききました。
また、THE ALFEEの楽曲「Just Like America」のレコーディングで使用されたと
も書いてあり、遅くともこの曲がレコーディングされた1989年には坂崎の手に渡っていたことになります。
ポジションマークもインレイもないので失敗があまり許されない(他の2人にいじられる)ライブでは使えないギターだと思います。
(以上 ブログ主注釈)
この7-45だけではないと思いますが、
一定レベル以上のギターは所有者が変わることでストーリーが生まれるんだなと
つくづく思います。
大きなD-45S
フォーク村の配信時間が終了しここからは「はみ出し」という形でOAされました。
D-45SはDサイズですが、12フレットでネックがジョイントされているのでボディー面積が広い。そのため音が大きい。
所有者は坂崎村長です。
■加藤和彦さんの遺品で坂崎が預かっている状態。
言葉は短いですが、坂崎の人脈やいろいろな背景が想像できます。
ご遺族から申し出あったとのこと(出典:THE ALFEE 坂崎幸之助 ギター音楽館)
ちなみに、アコギの音が鳴るメカニズムですが、
ブリッジとフレット、ペグからネックやボディートップに伝わった弦の振動が
さらにサイド、バックに伝わり、ボディーの木全体が振動することにより音となります。
そしてサウンドホールがスピーカーの役割を果たし、聞こえているのです
サウンドホールが弦の振動を吸収してボディー内部で増幅されていると
勘違いしている人が多いようですが、微弱な弦の振動は空気中を伝わるはずはなく、
それは大間違いです。
(以上 ブログ筆者注釈 出典:ゼロからはじめる音響学 青木 直史著)
少し話がそれますが、坂崎は新しく購入したギターを「泉谷弾き」と称してラジオの生放送中だろうが激しくかき鳴らします。
ボディートップの裏にはブリッジからの振動に耐えるための力木が張り巡らされているのですが(ブレーシング)、強く激しく弾くことによってこの力木の威力がこなれて、ボディートップの振動が軽やかになるのだと思います(論理的には高音側が出るようになるはず)。
従って、泉谷弾きは激しい弾き方をするのがポイントだと思います。
マーチン社はこの力木のパワーを弱めるために一部を削って軽くしたスキャロップトブレーシングを採用しています。力木のパワーを弱めるとよく振動するのと引き換えに強度が下がるので難しいところでしょう。
そう考えると泉谷弾きはアコギだけの秘技だと思います(エレキには無意味)。
話を戻して、
マーチン社のHPによると
14フレットジョイントのDサイズが誕生したのは1934年なので、
最初期のD-45は12フレットジョイントだったことが言えます。
(以上 ブログ筆者注釈)
とにかく少しでも大きな音を出すことが当時のギターに求められた性能だったのでしょう。
珍素材を使った1-45は4本のみ製造
1-45はブジッリに象牙を使用
アメリカの楽器店ディットソンが別注した4台しかない「45」が登場。通称ベビーDー45
おかまないしに丸山さんが解説
■1911年から1919年の間に4本のみ製造 うち1本はスティーブンスティルスが所有
■白いブリッジ、ナットは象牙。ワシントン条約に抵触するため、分解し象牙パーツは判子業者が輸入し、のちに組み上げた
判子店のHPなどで調べると、
判子業者は政府の管理下で象牙の輸入ができるようですが、それは判子として使うからだからできるのだと思います。
ギターパーツの象牙を日本に輸入するために判子業者を使うというのはダメだと思うのですがどうなんでしょうか?制作陣はちゃんとした事実関係を精査して合法であることを示したほうがよいと思います。
(以上 ブログ筆者注釈)
45じゃないけど・・激レアD-18
ここで下位機種のD-18(1940年製)が登場、45ではありませんが、もはや誰も何も言いません。
テレビ的には誰かが「45じゃないの?」と言いそうですが・・。
18の型番はサイドとバックがマホガニーという仕様です(ブログ筆者注釈)
丸山さんの熱い解説は続きます。
■戦争の影響で物資が不足しヘッド部分にもべっこうが張られているレア仕様で、
トートイズ(亀 Tortoise)と言われている。
■生産本数は不明だが、現状この1本しか確認されていない。
(以上 丸山さん談)
「なんでそれがここにあるの?」
「怖い」
(以上 ももクロ談)
戦争でマーチンのクオリティーがアップ
戦争で若手職人がいなくなり、結果的に熟練の職人がギターを作るようになったことなどが語られました。
戦争による影響は大きいのですね。
残りのギターは30日の本番に登場することと思います。
ふと気が付くと、坂崎と丸山さんが恐ろしいほどハイテンションなのに対して、DMBの面々は疲れているのか、心ここにあらずと言った状況です。仕方ありません。マニアックすぎです。
もしくは番組制作陣もこのハイテンションな丸山坂崎vs引き気味のDMBといった構図を狙っていたのかもしれません。そこをいじる構成になるのでしょうか。
それにしても
丸山さんはともかく、凄いのは坂崎で、2時間の歌番組の司会をこなし、自らもギター、歌、コーラスを担当。リハも含めると長時間の労働になっているはず。しかもダントツの高齢者(68)です。
どこからこのバイタリティーがわいてくるのでしょうか?
おそらく、知らずに見たらフォーク村に直結して収録したとは思えないでしょう。途中トイレすら行っていません。歌い終わって水も飲んでないような気がします。
とにもかくにもD-45のもつ、人を熱中させるパワーはすさまじいとしか言いようがありません。
個人的には、手持ちのフェンダー、ギブソンの計5台のうち1台だけ残し、全部売って資金を作りD-45を買いたい心境です。バンドでエレキギターを担当しているのですが、1台あれば十分です。
坂崎に感化されました。
丸山さんの正体は?
ここから先は私の感想です。
丸山さんが何者なのかわからないことの違和感のせいで、このままだと配信バラエティー番組の域を出ない感じがしました。丸山さんは顔は出していますがフルネームすら表記されていません。
同席していたももクロのメンバーも
「誰?」
「なんでそんなものがここにあるの」という旨の感想を連発し、
最後は「怖い」と言っていましたが、私も同じで、視聴者の感覚に近いものがあると思います。
ただ、考えようによってはこの素の突っ込みがいい味を出しているのかもしれません。
また、丸山さんをガチで紹介して各ギターの背景を語っても退屈なのかもしれません。
配信番組のバラエティーということを考えてもこれでいいのかなーと思います。
丸山さんですが、
マーチンへの偏愛や知識の豊富さは十分に伝わるのですが、
分かっていることは
マーチンのコレクターであることと苗字と男性、関西弁で話す
といったことだけです。「その辺を素通りする人」とも言っていましたが・・。
素性を明かさない以上、
極端な話、実はビンテージマーチンの闇取引のブローカーである可能性も捨てきれないのも事実です。
(極めて悪く言うとですが・・)
エレキ一筋だった私ですが、坂崎のせいでアコギに夢中になっています。そのうちD-45を買ってしまいそうです(現実は長女が大学受験なので経済的に無理)。
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