個人的に80年代中期以降のクラプトンのアルバムや曲が大好きです。
発売から数年後でしたが、86年の「August」でクラプトンを知りました。
聞いてみると、「AUGUST」の前作と後作でサウンド大きく違います。
「MONEY AND CIGARETTES」と「JOURNEYMAN」では別物だと思います。
2023年4月に来日することが発表されています。
「August」を境にギターがブラッキーからTBXコントロール、アクティブピックアップがついた最新のものになり、アンプもマーシャルになったことが影響してることは間違いありません
クラプトンは機材を変えて、新しい音色を作り出すことで新しいアルバムを作ってきたと思いっています。ギタリストが牽引するバンドはこのパターンが多く、私は大好きです。
さらにその後、クラプトンモデルのストラトとソルダーノが登場し、
クラプトン=新しいロックのギタリストだと、過去の作品を聴いていなかった私は思ったものです。
80年代のクラプトン⇨ソルダーノにマーシャルのキャビネットというのが
トレードマークになっていますが、ここに至るまでの機材の変遷をもう少し詳しく調べてみます。
参考にした文献は
ヤングギター 2001年12月号
シンコーミュージック・エンターテイメント 2001年12月1日発売
アンブルースド 80年代のエリック・クラプトン
シンコーミュージック・エンターテイメント 2022年3月10日発売
ギター・マガジン 2022年2月号 特集:レイド・バック期のエリック・クラプトン
リットーミュージック 2022年1月13日発売
フェンダー公式HP Story of Eric Clapton Signature
ほかネット上の大量の動画や情報、私の記憶なども含め分析しています。
とくに
ヤングギター2001年12月号はクリーム期から90年代末までのクラプトンの機材やセッティングや再現方法まで網羅されていて、私にとっては神本です。
クラプトンファンのギター弾きはぜひ手に入れることをおすすめします(意外と売ってます)。
そして、今年になってクラプトンを振り返る書籍が少なくとも2冊発売されているようです。
どちらも即買いしました。
参考までに、近年のクラプトンの機材はこちらです。
クラプトンモデルの音と詳細はこちらです。
「ブラッキー」の愛称が日本に伝わった時のエピソードです。
私にとって、推しギタリストの機材やセッティングの情報収集のソースは圧倒的に書籍です。
ライターが実際にバックステージやスタジオに潜入して書いているからです。
79年〜82年まで
「JUST ONE NIGHT」はストラトのクリーントーンのみ
74年以降、ミュージックマンのアンプにギブソンの58年製エクスプローラー、64年製ES-335、60年製レスポール、75年製テレキャスなどを使用していましたが、
79年の「JUST ONE NIGHT」はストラトのクリーントーンのみ。
このアルバムでは、ほとんどリアピックアップは使っていないと当時のローディーが証言しています
(出典 アンブルースド 80年代のエリック・クラプトン)
近年と比べるとストラトの音がかなり枯れていて、素朴に聞こえますね。
Wonderful Tonightはコーラスがかかっているのがよくわかります。
そのほかの機材もまとめると、
79年から82年
■ギター
ブラッキー
54年製ストラトキャスター(ハードテイル)
フェンダー リードⅡ
ES-335
■アンプ
ミュージックマンHD130リバーブヘッド
212HDキャビネット
小型コンボアンプ(ピグノーズ、チャンプ、ブロンコなど)
■他
BOSS CE-1
MXRのアナログディレイ
ジムダンロップのワウワウペダル
レスリースピーカー
クラプトンが使っていたHD130は東京・渋谷にあるナンシーというギターショップに保管されている
そうです。私の家の近く(約3km)にこのアンプがあったとは。
オールチューブ改造疑惑がある中、実際に中を見てるとソリッドステートのままだったそうです。
ヤングギター2001年12月号に掲載されている写真です。
2001年当時は、オールチューブに改造されていることが定説でした。その旨の記載もあります。
コーラスの右にあるスイッチボードはレズリースピーカーのコントローラーです。
83年~85年まで
Strings&thingsのBluesmasterが登場
83年にクラプトン本人が興味を示しステージで使用を始めたということですが、情報があまりない中、
アンブルースド 80年代のエリック・クラプトンに写真が掲載されています。
A.R.M.S Benefit Concert では再びギブソンのエクスプローラーも
7分50秒すぎからの演奏でギブソンエクスプロラーを弾いています。74年に使用していたボディーがカットされたものとは違う個体です。
この前の曲はストラトなのですがフェンダーではなく、Roger Giffin Custom Stratoだと思われます。(アンブルースド 80年代のエリック・クラプトンには84年秋に登場と記載されています・・・)。
スライドプレーがかっこいいです。いずれもクリーントーンというよりはクランチ気味です。
83年ごろになって、再び歪みサウンドが復活の兆しを見せています。
85年のFoever ManのオフィシャルビデオがYou Tubeなどで視聴できますが、1分20秒すぎのリードはパワフルなディストーションサウンドをブラッキーで弾いています。リアピックアップで弾く2分50秒すぎのリードはさらにギンギンです。
今まで何気なく聞いていましたが、ブラッキーのディストーションサウンドはこれが最初で最後ではないかと思われます
アルバムBEHIND THE SUNに収録の「She’s Waiting」のイントロなどはあきらかにこれまでにないような空間系のエフェクトがかかっていますね。ギターの音色にかかなり幅が出てきました。
ボブ・ブラッドショーのペダルシステムが登場
85年にボブ・ブラッドショーのペダルシステムが導入されるのですが、ラックに組み込まれたのはアイバニーズのディレイHD1500、DBX160コンプレッサー、ローランドSDE3000、
トライ・ステレオコーラス、BOSS HM-2、以前からのクライベイビー、BOSS CE-1などです。
アンプがMarshall JCM800の50W、キャビネットは1960A/Bになり、
サウンドが激変したのはこの影響といって間違いありません。
ライブではディーンマークレーのSignature Series 120も使われていたようです。
83年から85年
■ギター
ブラッキー (メイン)
ギブソンエクスプロラー
Roger Giffin Custom Strato
エリート2台(フェンダー社提供)
56年製ストラト(ブラウニー)
53年製ストラト(ハードテイル仕様)
56年製ストラト(1音下げ)
■アンプ
ミュージックマンHD130リバーブヘッド
212HDキャビネット
Marshall JCM800 50W
1960A/Bキャビネット(85年から)
ディーンマークレー Signature Series 120
■他
アイバニーズHD1500
DBX160コンプレッサー
ローランドSDE3000
トライ・ステレオコーラス
BOSS HM-2
ボブ・ブラッドショーのペダル
依然ブラッキーがメインでしたがアンプが大きく変わりました。
ブラッキーのディストーションサウンドが聴けるのはこの時期だけですね
HM-2ヘビーメタルはほとんど使っていなったと当時のローディーが証言しています
(出典 アンブルースド 80年代のエリック・クラプトン )
86年~89年まで
2台のシグネイチャーモデルが登場
86年7月のモントレージャズフェスティバルでトリノレッドとピューターグレイのシグネイチャーモデルが初お目見えしたとされています。ピューターは予備だったようで、トリノレッドがメインで使用されています。
このギターの誕生までの経緯がフェンダーの公式HPに詳細に記されています。
Story of Eric Clapton Signature
トリノレッドとピューターの2台はクラプトンモデルのプロトタイプの扱いで21フレット仕様です。
「AUGUST」のレコーディングは終わっていましたがソロパートをこのトリノレッドで弾き直したと
先述のフェンダー公式HPに書かれています。
87年いっぱいまでは、アンプはマーシャル、ボブ・ブラッドショーのペダルが使われています。
ソルダーノとマーシャルの組み合わせに
88年になり、ソルダーノのSLO-100が導入され、マーシャルのキャビネットに接続されます。
その年の来日時もこの組み合わせだったことが確認できます。
クリーントーンに真空管アンプが生み出す強烈な粘りが加わりました
このサウンドはかっこいいです。
80年代後半のこの音を真似ようとする人は私を含め、今でも多いのではないでしょうか。時代は変わり、SLO-100は色々なデジタル機器でモデリングされています(実機も現行で売られているようです)。
バンドに参加したマーク・ノップラーがソルダーノを使っていて、試したクラプトンは「これを買わないと!」と言ったそうです。今後のアルバムのサウンドを決定づけていますね。
当時のヤングギターのインタビューでソルダーノのボリュームはフルアップと本人が答えていたことを
記憶しています。フルアップにしないと気合が入らないらしいです。
2代目”ブラッキー”は22フレット仕様
88年には22フレット仕様のエリッククラプトンモデルが市販され始め、本人の使用機も同じ22フレットのブラックカラーのものとなりました。
89年に「JOURNEYMAN」をリリースしますが、ライブでの使用機材は引き続きソルダーノとマーシャルです。この組み合わせがクラプトンのトレードマークになっています。
86年~89年まで
■ギター
クラプトンモデル(プロトタイプ合計3台)
クラプトンモデル(22F仕様ブラック)
クラプトンモデル(セブンアップ・グリーン)
■アンプ
マーシャル JCM800
ソルダーノ SLO-100
■他
ペダルはピートコーニッシュが改造
アイバニーズHD1500
DBX160コンプレッサー
ローランドSDE3000 など
まとめ
80年代のメインギターとメイン機材をまとめると、
【80年代序盤】
ブラッキー
ミュージックマンHD130
【80年代中盤】
クラプトンモデルのプロトタイプ(赤とピューター)
マーシャルJCM800 50W
【80年代終盤】
クラプトンモデル(22F仕様)
ソルダーノ SLO-100
ギターとアンプの変遷がそのままアルバムサウンドの変遷になっています。
ちなみに、中古含めたくさん流通しているクラプトンモデルですが、
ヘッドに”BLACKIE”のデカールがあるせいか、
「ブラッキーを再現」などという売り文句をよく見かけますが、大間違いです。正しくはブラッキー引退後の新しいサウンドを追求したギターです。
特に中古楽器店の販売サイトなどで上記のような誤認が顕著です。
ブラッキーは50年代パーツの寄せ集めストラトです。間違ってもTBXやアクティブピックアップは
ついていません。
現状、ブラッキーを再現したギターはカスタムショップ製の高価なものしかないようです。
フェンダー社も”BLACKIE”としていて、BLACKIEじゃないことは認識しているようです。
(“”のあるなしでごまかした?)
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